Vol.03 2022.11.17
「好きをつなぐ」
木村 由美 Kimura Yumi
Profile
株式会社 ティー・シィー 営業
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-12-7
TC HOUSE OMOTESANDO
URL: http://tsumorichisato.co.jp
01ツモリチサトとお客様の笑顔を繋ぐ
木村由美さん
世代を問わず永遠の愛らしさを表現する「ツモリチサト」。
東京の表参道を拠点に、毎シーズン、インスピレーション溢れる夢のあるファッションを発表している。
作品は一点一点に想いが込められたアートであり、世界的にもファンは多い。ブランドのデザイナーである津森千里さんは、1990年に「TSUMORI CHISATO」ブランドを設立した。
「TSUMORI CHISATO」は、パリでのコレクションを発表するなどして、世界中でファンを獲得してきた。
ブランドは、現在、デザイン事務所であるティー・シー(T.C)で、受注会を中心とする新たなオーダーメイド型ブランドとして新展開を見せている。
ツモリチサトの営業部門で、ブランドとお客様の笑顔を繋ぐ木村由美さんに、ブランドへの想いや魅力を伝えていただいた。
02ツモリチサトとの出逢い
私は、小学校の1年生のときから大学の部活動まで卓球をしてきました。
母が卓球の国体に出るなどしていたので、その影響で私も小さな頃から卓球一筋の体育会系でした。
そんなこともあり、あまりファッションには関心がなかったのですが、大学生の頃、幼馴染で一緒に卓球をしてきた洋服好きの男子から、「ゆみちゃんはスカートとかではなくて、もっと体形に合った服の方が良いと思うよ。ツモリチサトというブランドがあって、そこのデニムは綺麗なラインで良いと思うよ」と勧められました。
早速、青山にあったツモリチサトの路面店に服を見に行ったのですが、こんなに可愛い服があるんだと感動し、ツモリチサトを着てみたいと思うようになりました。
ファッションに無関心だった私がツモリチサトと出逢い、ツモリチサトを買うためにアルバイトを始めました。
ツモリチサトは、当時の私にとって高価な服でしたので、卓球のコーチのアルバイトや飲食店でアルバイトをしながらお金を貯めました。そういえば、神田のプロントでもアルバイトをしていましたので、神田には馴染がありとても懐かしい場所です。
アルバイトで貯めたお金で欲しかった服を買えたら、今度はあれが買いたいというモチベーションでアルバイトを続けました。
ブランドを紹介してくれた幼馴染によれば、自分がいいと思ったブランドに興味を持って、私がツモリの服を着て楽しそうにしているのを見て嬉しかったと話していました。
アルバイトをして初めて買ったツモリチサトの商品は、メンズアイテムのスカルモチーフが全体に刺繍されたポロシャツでした。
確か2万円くらいだったと思うのですが、アルバイトも大学生になって初めてした経験で、自分で働いたお金でお買い物すること自体が初めてだったので特に印象深く記憶に残っています。
刺繍が特徴的なので、友人には「どこの?」と聞かれることが多く、服について聞かれるという経験も初めてだったのでとても嬉しかったです。
大学では服を好きな同期がなぜか多く、部活がないときに青山のデザイナーズブランドのお店を教えてくれたり、渋谷や中目黒の古着屋さんに連れて行ってくれたりしました。
ツモリチサトの服を好きになってからは、服のコーディネートのアドバイスや小物をもらったりとより仲良くなった気がしています。
私が興味を持ったことで、部活の後輩なども一緒にお店を見に行ったりと、周りを巻き込んで楽しんでいました。
家族は今までジャージしか着てこなかった娘が、個性的な服を買ってきたので、初めはとても驚いていたように感じています。笑
父は服には無関心なので、特にコメントはなかったのですが、母と姉は今でも新しく買った服やツモリチサトの服を持ち帰った時はリビングでファッションショーをして一緒に楽しんでくれています。
大学生の時は数着しかツモリチサトの服は持っていませんでしたが、就職してからほぼ毎日ツモリの服を着るようになり、母と姉は私がプリントのアイテムなど、カラフルな服を着ていることで、自分も着たい服を着よう!と思ったようで、少し派手?になった気がしています。
ツモリチサトを着るようになって「服を自由に楽しむ」ということが家族に伝染したと思います。
ツモリチサトに出逢ってから、卓球一筋だった生活がファッションという彩を得ました。
03店長時代の思い出
就職活動では、自分が大好きなもの、自信をもってご紹介できるものを直接届ける仕事がしたいと思い、ツモリチサトを販売していた㈱エイ・ネットに入社しました。
入社以来、ずっと百貨店でツモリチサトの接客をしてきました。
最初の店舗は柏髙島屋ステーションモールでした。その後、有楽町西武、小田急百貨店新宿店、そして一番長く勤務したのが日本橋三越本店です。
三越本店には6年ほど勤務をし、途中からはじめて店長になりました。
その後、伊勢丹新宿店の店長も務めました。
接客の中で、私が一番大切にしていることは、お客様がツモリチサトにいらっしゃる時間やお話をする時間を、他のどこのお店にいるよりも楽しんでいただきたいという思いでした。
たくさんのブランド、ショップの中からこのショップを選んでくださったお客様には、ツモリチサトの空間にいる時間、その瞬間を心からリラックスしてお買い物を楽しんでいただきたい。そのため、一人だけで接客するのではなく、「お店としてお客様をお迎えする」ということをスタッフで共有し、お客様の居心地の良い空間づくりを目指しました。
また、商品はすべて試着して、自分が大好きなツモリチサトを、どう組み合わせるとより可愛くなるのか常に試行錯誤していました。スタッフによって好みも違うので、お互いに良いと思う商品のポイントを伝え合い、様々な角度からより具体的に商品の利点、魅力を伝えられるように準備をしていました。
お客様の年齢層も幅広いため、1つの商品に対してカジュアルやオフィス用、お休みの日のお出かけ用のコーディネートなど、お客様の着用シーンに合わせてご提案ができるようスタッフで考え共有をしていました。
そして、自分がどんな販売員になりたいかを考えた時、「自分だったらこんな人から買い物がしたい」というイメージがベースにあります。
販売員としての自分の姿を想像し追求することは、私自身が人としてどんな人で在りたいかを考えることと同じでした。
仕事を通し、なりたい自分像を具体的にし、成長するきっかけをくれた仕事に出会えたことを幸せに思っています。
お店ではお客様がショップにいる時間に商品以外でも楽しんでいただけるような話題やイベントはないかを常に探していました。
そんなことを考えていた時に「世界一になってみたい!何かの世界一の販売員って面白い!」とふと思ったのがきっかけで「スピードボール」というスポーツを始めました。
スピードボールという競技は、日本だとマイナーなスポーツなのですが、エジプト発祥のスポーツ(球技)です。
私は幸運にも日本代表としてポーランド大会、エジプト大会にも参加することができました。
スピードボールは、動体視力や反射神経が重要なので、きっと、子どもの頃から取り組んできた卓球も活かせた部分があると思います。
一番にはなれませんでしたが、お客様との会話で練習の状況や、この世界大会の話題で盛り上がったりして、世界への挑戦はとても良い思い出となりました。
店長としては初めは目標管理にプレッシャーを感じ、また「人を育てる」という感覚があまり分からず、何から行動したらいいのか悩むこともありました。
自分が目指したいお店をイメージした時、お店はスタッフの「自己実現の場」、それを引き出し、サポートするのが店長としての役目だと考えました。
私自身もツモリチサトの販売員として自分がしたいことがあるように、それぞれのスタッフにも目指すものがあります。目標や考え方は違っても、やりたいことがある、だから、「みんなの自己実現の場にしよう」と思い、よくスタッフと話し合いました。
そのようなコミュニケーションを通じて、私という個人もよく知ってもらいます。
私がどんな考えで、どんな人間なのか。
どんなことでも「誰から言われるか」ということも重要だと思います。
自分が苦手な人や、お互いに考えを理解していない場合は、反発や意見を受け入れにくくなることがあると思います。
そして悩みがあったとき、辛いときに相談したいと思える相手になれるよう、何気ない会話も含めてコミュニケーションをとる時間はとても大切にしてきました。
店長という前に一個人としての自分を知ってもらうことで、お互いに目標に向かって無理なく進むことができると考えています。
たわいのない会話やお互いに夢を語り合ったり、好きを語り合う、スタッフとはそのような時間がとても重要だと思います。
そして、チームとしての目標を定めて、そのために具体的にどんな行為ができるかを全員で創り上げました。店長だけで決めて指示する、とうことは避けて、それぞれお互いを理解したメンバーで、みんなのお店をみんなで創り上げようと考えました。
スタッフそれぞれの強みと課題をチームとして認識し、お店として良くなるようフォローし合える体制を作れば、それがお客様にとって快適な空間になると信じています。
縁があって同じお店で働くスタッフですから、人として仲間を大切にしたい、店長としてはキャリアのサポートなど、自分の経験値でできることをしたいという思いもありました。「育てる」ではなく、「仲間を想う」という気持ちでした。
その結果、それぞれのスタッフが主体的に行動することでお店に活気が出て数字も達成しました。店舗の目標数字につながるということは、自分の大好きなツモリチサトをより広めていくことを意味しますので、ますますモチベーションが上がりました。
お客様にもスタッフにも、「共に過ごせる時間を大切にしたい」という部分では共通しています。
店長時代のスタッフとは今でも仲が良いです。
04現在の仕事とやりがい
ツモリチサトは、2019年に表参道に拠点を設けました。
表参道では、春夏と秋冬の年に2回、新作の受注会を行っています。
ツモリチサトを懇意にして頂いているお客様にご案内をし、シーズンのアイテムをすべてご覧いただきご注文をいただくイベントです。私もお客様と直接お会いして、商品の説明をします。
商品は、お客様にご注文を頂いてから、ご注文をいただいた数だけ製造発注します。そのため、大量の在庫を抱えるということがなくなりますし、環境にも負荷が少ない営業形態を実施しています。
新作の受注会を終えたら、その後、週末を中心に表参道のオフィスの一部をショップとしてオープンし、シーズンのアイテムやオンリーワンアイテムなどの販売を開始します。普段はオフィスとして機能しているのですが、週末はショップとして不定期にオープンしています。
ショップには初めてのお客様も来店されますので、そこで新たにツモリチサトのファンになっていただいた方々には新作の受注会もご案内しています。
私のお仕事は、この年2回の新作受注会に向けての準備から商品のお届けまでがメインの業務です。
お客様へのご案内、お客様とお会いしての接客、受注管理・商品発送などを行います。
お届けするお客様をイメージし、コーディネートを考えたり、どんな言葉でお伝えしたらこの商品の魅力がより伝わるのかなど、お客様をイメージして考えるこの時間はとてもワクワクする幸せな時間です。
常設ショップでの販売とは異なり、注文からお届けまでお時間をいただくモノづくりのため、限られた受注会の時間でお客様によりフィットしたご提案ができるように工夫をしています。そしてお届けした時にコーディネートが組みやすい提案になっているのか、受注会前に以前購入いただいた商品と合わせてご提案ができるようお客様ごとに準備をしています。
その後、ショップでの接客・オンラインショップの発送なども行います。
ブランドの会社は、株式会社ティー・シーという名で、特に部は設けておりませんが、津森さんからは、冗談半分に「営業部長」と言って頂いて、光栄に思っています。
新作の受注会は遠方からお越しいただくお客様も多く、楽しみに期待をしてくださるお客様にお会いして直接ご案内できる喜びを感じています。
ツモリチサトは、毎回テーマも楽しく、2023年の春夏は「海賊猫」などがテーマで猫の海賊や海賊船が登場します。
05ツモリチサトへの想い
ツモリチサトは、ジャンルにとらわれることなく、毎シーズン違う新作が登場します。とても新鮮ですが、どれもツモリチサトだとすぐに分かります。
毎シーズン、お客様と同じように新しい商品が出来上がるたびにワクワクする気持ちは、初めてツモリチサトを知った大学生の頃から今でも変わっていません。
津森千里さんの物作りは常に一貫しています。
津森千里さんは、ラフ画や何気なく書いた文字なども、とても可愛くツモリチサトそのものです。
私自身、ツモリチサトに出会い服の魅力、楽しさを知りました。そして販売員としてたくさんの素敵なお客様、スタッフに出会えたことで人生が豊かになっていると思っています。
商品をお届けする方に、カラフルでパワー溢れるツモリチサトのアイテムを通して、私自身も少しでもプラスの関わりができたら幸せなことだと考えています。
自信を持っている商品だからこそ、できるだけ多くのお客様にお届けしたい。
ツモリチサトを販売することは、本当に私の好きを実現することです。
最後に、私が好きな津森千里さんの言葉です。
いつかのシーズンのときに津森千里さんが書かれていた言葉で、ツモリチサトを表現する素敵な言葉だなと思い、写メを取っていつも眺めている言葉です。
今回は、「好きをつなぐ」と題して、日本有数のファッションブランドであるツモリチサトの木村由美さんにご登壇いただいた。
木村由美さんと接していると私たちが元気になる。
私の事務所のスタッフは、ツモリチサトのファンであると同時に木村さんのファンでもある。
特に、私たちが木村由美さんに感動するのは、例えば、ツモリチサトで洋服を購入した場合、木村さんは「以前お買い上げいただいたトップスと合わせてコーディネートすると素敵です。」などのアドバイスをされることである。
木村さんはただ商品を売っているのではなく、顧客のことを心から興味を持ってご提案されている。
「自分で買ったものは忘れない」。それと同じように木村さんは自分のことのように顧客に接するため、誰に何を売ったのかをよく記憶され、また記録されている。顧客が以前購入した商品とのコーディネートをご提案いただけるというのはショップ店員としては最高のスキルであろう。
このようなことができるのは、木村さんが心から「自分の好き」を提供しているからだと思う。
ブランドショップの店員さんのイメージは近寄りがたいイメージがあるが、木村さんはいつも気さくで、明るく、気取ったところが一切ない。
会話の内容も、その日のお弁当のことだったり、ご実家の畑の収穫のことであったりと、共感できる内容ばかりである。お休みの日には、一日中映画館にいて数本の映画を見ることもあるということです。
幼馴染の一言からツモリチサトと出逢い卓球一筋の人生を変えていく。
ファッションとは無縁であった大学生がファッション業界に就職を決め、数少ない店長に昇格し、そして今では津森さんからブランドの営業部長とまで言っていただける地位にたどり着いている。これはひとつのサクセスストーリーだと思う。
素敵なブランドは、想いのある方が届けることにより、より届くのだと思う。
木村さんの益々のご活躍を楽しみにしています。